目次
1. 古川節子さん
2. mamiさん
3. 福冨渉さん
4. 葛城杏子さん
5. ウィッタモン・ニワッティチャイさん
6. 磯村真沙子さん
7. 廣貞葉子さん
8. 池尾優さん
あったかい夜のお菓子ブアローイ・カイワーン
古川節子
チェンマイ在住20 年。現地発行の情報誌ライター。著書にガイドブック『古都チェンマイのとっておき』
ブアローイ・カイワーンは寒い夜に食べたくなるお菓子だ。昔通っていた学校のそばの路地に、寒季の夜になるとおいしいブアローイ・カイワーンの屋台が出た。あったかいココナッツミルクに、黄色や紫色の小さなお団子がコロコロ浮んでいて、半熟卵を入れて黄身と絡めて食べれば、満足感は一層アップ。もちろん暑い季節だって食べられるのだけど、やっぱりふーふーいいながら食べたい。寒季になったら、また行ってみようかな。
もちもちのお団子の食感がたまらない
細く繊細な見た目と香りのギャップが楽しい
タイに来て間もない頃、伝統菓子の食べ歩きにハマっていました。なかでも一番好きなのがフォーイトーン。元々はポルトガル伝来のお菓子で、日本の鶏卵素麺と見た目はそっくりですが、口に入れるとスモーキーな燻製香にびっくり。この香りはティアン・オップというお菓子に香り付けするためのキャンドルを燻したものだそう。苦手な人も多いようですが、このクセがあってこそ、フォーイトーンの甘みが際立つ気がしています。
宝石みたいなブアローイとフォーイトーン
人を結び、歴史を紡ぐ金色の糸
福冨渉
訳書にプラープダー・ユン『新しい目の旅立ち』など。タイのおいしいコーヒー豆を探し求めている
Twitter :
@sh0f
鼻に引っかかる甘さが気になって、好きかと聞かれると、よくわからない。日本には鶏卵素麺として残るポルトガル由来のフォーイトーンは、アユタヤ時代にターオ・トーンキープマーが伝えた。禁教令を受けてタイに逃れたキリシタンの日本人をルーツにもつ彼女が、政争でギリシャ人の夫を失い、宮廷に料理人として仕える中で残した甘味。多民族都市アユタヤの混沌と豊かさ、歴史の綾を感じるようで、つい手にとってしまう。
ジャスミンで香りづけをする
姿かたちが美しいカノム・サイサイ
葛城杏子
もうすぐ在タイ16年の本誌デザイナー。バンコクで5年間暮らし、その後チェンマイへ。好きなものは、息子
刺激的なタイ料理の後に食べると、舌がホッとする優しい甘さのお菓子、カノム・サイサイ。ココナッツミルクと米粉を混ぜて、バナナの葉に包んで蒸し固めたもので、ココナッツミルクプリンと言えばイメージしやすいか。中にはココナッツの果肉を煮詰めた餡が入っていて、程よい塩気がある。そして見た目も良い。バナナの葉できれいに三角形に包み、ピンと飛び出た上部にスッと竹串を差し込み留める。一見地味だがとても美しい姿だなと見るたびに思う。
TCDCのロゴでもお馴染みのフォルム
愛情のしるしとして贈られるお菓子
艶々でカラフルなルークチュップ。名前のチュップは「包む」工程から。野菜などさまざまな形があり、どれも丁寧に作り込まれています。縁起のいいお菓子とされており、年上の人が年下の人に贈ったりもします。その起源は、アユタヤ時代にポルトガルのお菓子から影響を受けたと言われ、タイではアーモンドの代わりに緑豆を用いて作ります。幼い頃、ラチャウォン交差点にルークチュップの屋台があり、大好きな味でした。
一度食べ始めると止まらなくなります
タイのお菓子は今日食べないといけないのがいい
磯村真沙子
SopMoeiArts ボランティア。タイに25 年!辛党ですが、タイの果物と甘さ控えめのスイーツも大好きです
やさしい甘さのココナツミルクにルビー色の小粒が浮かんだタプティムグロープ。まわりのもちもち感と、中のくわいのしゃっきり感がいい。セラドンの器に盛るととてもきれい。チャトチャックの名店がこの間行ったらなくなっていた。オートーコーまで足をのばしてゲットできたけど、家の近所に売っている屋台がないのが残念。ルークチュップも好き。目に楽しく、食感もいい。形や色合いの造形に手間をかけるタイの職人さんは尊敬に値する。
ぬるめのココナッツミルクに氷を入れて
私のオアシスランノックパーブン
私がチェンマイで一番好きなのはタオトゥンという薬膳のデザート。ワローロット市場にある中国寺の脇の屋台のお店の味が好みで、生地探しなどをして暑さでどうにかなりそうな時の私のオアシスだった。レンコンや銀杏、ハト麦、デーツ、蓮の実などをラムヤイエキスで煮たものを、氷に混ぜていただく。好きなものがこれでもかこれでもかと入っていて泣けるし、値段も泣けるほど安い。お店の人も清々しく、素朴で美しいデザートだ。
暑期におすすめのひんやりスイーツ
意外と繊細で気になるアイツ
アユタヤではもちろん、街でも見かけたら必ず買うのがロティ・サイマイ。糸状に伸ばした砂糖菓子を小麦粉の生地「ロティ」で包んで食べる。香ばしくもっちりした生地を頬張ると、綿菓子よりも食感のある砂糖菓子が、シャリシャリ音を立てて口の中で解けてゆく。一見髪の毛のようで奇妙だし、チープな駄菓子にも思えるけれど、実は五感で楽しめる繊細な逸品。食べると喉が乾くのに、灼熱のアユタヤで無性に食べたくなるのも不思議。
通常のロティに比べて油も甘さも控えめ