2017.12.12特集バックナンバー
特集「バンコク建築案内」②これから注目のタイの建築家たち
前回のバンコク名建築ファイルに続き、今回はバンコクに事務所を構え、私たちにも身近な建築を手掛けている建築事務所を紹介します!
Stu/D/O Architects
Photo:「Naiipa」 マサチューセッツ工科大学を修了したアピチャートとAAスクールで学んだチャナーシットが設立。2人とも建築事務所Architects 49出身で、サステナブルな建築が得意です。プラカノーン駅近くの複合施設Naiipaはタイ語で“森の中”を意味し、もともとこの場所にあった樹と一体化するようデザインされています。All (zone)
Photo:「MAIIAM」 設立者の一人である女性建築家ラチャポーンは、チェンマイのMAIIAM現代美術館をデザイン。東京大学で伊東豊雄に師事した経験をもち、周囲の木々に溶け込むようにデザインされた外観は、伊東の“透層する建築”を参照しています。タイで初めてLCDに選出され、最優秀新設美術館アジア・太平洋部門を受賞しました。VaSLab Architecture
Photo:「72 Courtyard」 コロンビア大学でベルナール・チュミに師事したワスとブンラートの2人によって設立。キュビズムやダダ、シュールレアリスムなどの芸術運動から影響を受けたという2人の作品は、コンクリートとガラスを組み合わせた直線的なスタイルが特徴です。トンローの72 コートヤードはAL_Aとのコラボレーションです。Department of ARCHITECTURE
Photo:「The COMMONS」 アメリカで建築の教育を受けたアマタとタウィティーが設立。ヒルトン・パタヤ、サーラー・プーケット、トンローのザ・コモンズなどを手掛けています。階段に沿ってオープンスペースが水平、垂直に広がる空間設計が斬新なザ・コモンズは、NYのArchitizerによりA+Awards(商業施設部門)に選出されました。Onion
Photo:「SALA Ayutthaya」 オランダの名門デザインアカデミーで学んだアリサラーとロンドンのザハ・ハディッド事務所での勤務経験をもつシリヨットが創業。アユタヤのブティックホテル、サーラー・アユタヤやスパンニガーイーティングルームのサートーン店を手掛けました。タイらしさとは何かをモダンに解釈し、提示し続けています。建築家 ドゥアンリット・ブンナークさんにインタビュー
川向こうのカルチャースポットThe Jam Factoryに続き、今年7月には対岸にWarehouse30をオープンするなど、いまバンコクで話題のリノベーション建築を手掛けるドゥアンリットさんにお話を伺いました!
Duangrit Bunnag 築デザイン事務所DBALP代表。チュラーロンコーン大学建築学部卒業。AAスクール修了。
「Warehouse30」 address: 52-60 Charoen Krung Rd. 「The Jam Factory」 address: 41/1-5 Charoen Nakhon Rd. Warehouse30は築70年、4,000㎡の巨大な倉庫をリノベート。アパレルショップ、カフェ、バーなどが入居しています。工事は現在も続いており、今後、タイ料理レストランなどが順次開業予定です。元のまま残した柱や梁がモダンなデザインと調和し、空間に温かみを添えています。The Jam Factoryにはギャラリー、書店、レストランなどが入居しています。DBALPの事務所も構えています。 Q: これまでに手掛けた代表的な作品は? A: 海外ではソフィテル・ルアンパバーン、国内では、エムクオーティエ、ナカ・プーケット、コスタランタ・リゾート、イサラ・ラートプラオなどがあります。 Q: The Jam Factoryの建築コンセプトは? A: 私たちはコンセプトからデザインを考えるということはしません。コンセプトを決めてその通りに創っていくと、制限が生まれてしまうからです。そうではなくて、ポシビリティー(可能性)から発想することが重要です。その場所のコンテクスト(文脈)を読み解き、この古い倉庫がどう変われるかを考え続けるのです。 Q: この倉庫を選んだ理由は? A: 倉庫のオーナーと知り合いで、ここをどう使ったらよいかと相談されたのがきっかけです。私はもともと古い建物や倉庫が大好き。価値がないと思われているものに価値を与えることに関心があります。 Q: 建築家の役割とは? A: 建築家は“創る人”のことですね。ただ建物を建てるだけではなくて、もっと広い意味で、空間、美しさ、技術革新に関わる仕事だと思っています。 Q: バンコクの建築を他国と比べて、バンコクらしさを感じるところは? A: ダイバーシティ(多様性)ですね。統一感なくいろんな建物が混ざっていながら、それらが違和感なく共存できているところがバンコクの個性だと思います。 Q: 日本人に紹介したいバンコクの建築はありますか? A: 正直、そこまでの建築はバンコクにはありません…。それより、街を歩いてそこに暮らす人々の生活に触れて欲しいですね。建物だけを見ても街は見えてきませんから。ヤオワラートやタラート・ノーイ、パーククローン・タラートがおすすめです。古い街が面白いですよ。 Q: 日本人の建築家と交流はありますか? A: 安藤忠雄や伊東豊雄と親交があります。また、日建設計と一緒にタイに会社を作る計画を進めているところです。 Q: そのほか、今取り組んでいるプロジェクトは? A: 大きな仕事では、スワンナプーム空港の第2ターミナルのコンペです。 以上、タイの建築家たちの紹介でした! みなさんの身近にある建物も、そうでないものも、ぜひ一度訪れてみたいですね☆ 次回はリノベ建築をご紹介します。お楽しみに!