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福冨先生に聞く注目のタイ文学作家6人!

タイ語書籍の翻訳を多数手掛け、タイの作家さんたちとの親交も深い福冨さんに、いま注目のタイ純文学の作家さんについて聞きました。

まずは福冨さんのプロフィールから

fukutomi sho

福冨 渉(ふくとみ しょう)さん
タイ文学研究者、翻訳者。神田外語学院非常勤講師。プラープダー・ユンの新著「新しい目の旅立ち」の日本語訳を批評誌「ゲンロン」(URL)で連載中。2016年9月、現代タイ文学の作家10人の作品10篇を選び、それぞれの作品の冒頭部分を翻訳掲載したZINE「はじめてのタイ文学」(URL)を発行。バンコクでもプラネッタ・オーガニカにて入手可能です。(100バーツ。冊数限定)


Q.タイの現代文学とは?
1970年代の政治動乱以降に成立したものを現代文学と呼ぶことが多いようです。今よく読まれているのは2000年以降の作品が中心です。

Q.東南アジア文学賞(通称シーライト賞)とは?
タイの芥川賞的な文学賞で、毎年1名を選出。出版から3年以内の短編、長編、詩が選考対象です。タイでは「文学」で暮らしていけるようになるための登竜門的な賞です。

Q.主な作家グループは?
ひとつは、70年代生まれ、91~92年の政治動乱を多感な時期に経験しており、21世紀の社会的混乱の中で政治的な作品を書くグループ(プラープダーやウティットなど)、
もうひとつは、はじめのグループから派生し、村上春樹的な都会暮らしの寂しさを描くグループ、
最後に、80年代生まれ、タクシン政権時代と2006年以降の政治的混乱を若者として経験し、社会や政治に対して諦念を持つタイのさとり世代(ヂラーポーンなど)
の大きく3つに分かれると思います。

Q.タイ文学がもつ魅力とは?
作品を通じて、タイという地域が持つ多様性や複雑な部分を垣間見れること。文学は人々の小さな声を拾えるツールではないでしょうか。


それでは福冨さんが注目するタイ文学作家6名を紹介します!

プラープダー・ユン

writer-1

1973年生まれ。NYで芸術を学び、グラフィックデザイナーから作家に転身。「存在のあり得た可能性」が2002年にシーライト賞を受賞。父親(大手英字新聞社長)の七光と揶揄されていましたが、それを逆手にとったメタフィクション小説を発表するなど、それまでにない物語の紡ぎ方と独特の文体でポストモダン文学の旗手となりました。日本では浅野忠信主演の映画「地球で最後のふたり」が有名です。


book-1 フィリピンでの滞在を元に書かれた随筆
「新しい目の旅立ち」

日本語で読める作品
「存在のあり得た可能性」
「鏡の中を数える」
「パンダ」
など




ウティット・ヘーマムーン

writer-2

1975年生まれ。タイのシラパコーン大学で芸術を学んだ後、映画美術やDJで生計を立てながら執筆活動を開始。3作目の長編「ラップレー、ケンコーイ」が2009年のシーライト賞を受賞。実の父親との関係や故郷サラブリー県を描いた私小説が多く、多作家。長編小説を得意とし、「ケンコーイ3部作」は、現実・非現実・歴史・神話の間を縦横無尽に飛び回る秀作です。


book-2 弟を愛する父親との確執を描いた
「ラップレー、ケンコーイ」

日本語で読める作品
「残り香を秘めた京都」
「罵る声」
「旧友の呼び声」
など




サカーリーヤー・アマタヤー

writer-3

1975年生まれ。タイ深南部のナラーティワート県(2016年12月現在、外務省の渡航中止勧告が発令中)出身で、タイ文学界では数少ないムスリムの詩人。普遍的なテーマを扱いながらも、バンコク在住者とは異なる周縁からの透徹した視線がすべての作品を貫いています。2010年に自由詩の詩集「詩篇の中に女はいない」がシーライト賞を受賞。クーデター前までは、毎日フェイスブックで詩をポストしていました。


book-3 平和を希求する36篇
「詩篇の中に女はいない」

日本語で読める作品
「サーカリーヤー・アマタヤー 詩選」




プー・クラダート

writer-4

1975年生まれ、シーサケート県出身。1冊の小説の中でいくつもの言語を混ぜて使うのが特徴で、一般的なタイ語の他、ラオス語、タイ語書き言葉、メコン川右岸ラオス語文法表記のタイ語などで表記します。タイとラオスに無理やり国境線を引いた歴史を踏まえた彼の作品は、その存在自体が高い批評性を持ち、「追放」はシーライト賞の最終候補になりました。現在も養鶏場で働きながら執筆活動を行っています。


book-4 社会の貧富の差を告発する短編集
「器官なき身体」





ヂラーポーン・ウィワー

writer-5

1982年生まれの女性作家。雑誌a dayやpolkadotで編集者として働いた後、フリーの書き手になりました。都会暮らしの女の子の物語を描いた作品には、80年代生まれのタイのさとり世代の特徴がよく現れています。パリというあだ名を付けられた女の子が雨の日にパリを思って泣く、という一見意味のないストーリーの短編小説も、卓越した文章運びで登場人物の心の動きと周りの情景が描かれています。


book-5 作家の猫と実業家のフラミンゴをめぐる物語
「フラミンゴ条約」





ウテーン・マハーミット

writer-6

1975年生まれ。ストーリーも文体もめちゃくちゃなエロ・グロ・ナンセンスの極みといった作風ながら、コアなファンが大勢います。マイクロソフト・ワードで打った原稿を自分でコピーして、ホッチキスで留めて、絵を描いて売る自費出版のため、作品によっては100部程度しか存在しません。最近は、出版社からも声がかかるようになってきており、シーライト賞にもノミネートされました。独特のリズム感のある文体が特徴。


book-6 これは愛なのか?と問う10編の短編集
「死を阻む愛」





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