2016.12.14特集バックナンバー
最新シーライト受賞作家 ウィーラポーン・ニティプラパーさんにインタビュー!
初めて書いた長編小説がシーライト賞を受賞し、一躍時の人となったウィーラポーンさん。主人公の内面を細やかな筆致で綴る同作は、恋愛物語でありながら、現代の人々が抱える問題をあぶり出しました。

Q 小説を書き始めたのはいつですか?
A 20歳の頃です。最初は短編小説を書いていましたが、作家として稼ぐのは難しかったので、コピーライターなど他の仕事もやりました。48歳になって息子が大学に入ったのを機に、書くのを再開し、3年かかって「迷路の盲目のミミズ」を書き上げました。
Q 書くのを一度やめたのはなぜですか?
A 自分は作家に向いていないと感じたからです。当時はまだ若かったし、書くべきことを持っていませんでした。その後、いろんな人生経験を積んで、やっぱり書くことが好きだと気づいたので、長編小説を書いてみることにしました。今は、自分の文体を持っていると言えます。
Q 作品を通して描きたいことは?
A “人”です。その人の世界、その人の国、その人の恋愛など、いろんな状況にいる人について伝えていきたいと思っています。
Q 受賞作に出てくる“マーヤーカティ”(神話)とは?
A 簡単な例を挙げましょう。人は生まれた時に性別のタグを付けられます。このタグがマーヤーカティです。本来、性別はあなた自身が決めるもので、生まれてすぐには判別することはできません。物心ついたときに、自分が思う性別とタグが一致すれば問題ありませんが、もし一致しなければ、性転換するか悩むことになりますね。とはいえ、性転換したところで、本来なりたかった自分になれたかどうかの確証は持てません。このように、この社会には多くのマーヤーカティがあります。タイ人が他の宗教について知る機会がなく、仏教を信仰しているのもその一つです。
Q マーヤーカティの問題は、自分が信じている以外の情報を持っていないことですか?
A そうですね。人は多数派に追随しがちですから。例えば、30歳で家を買うべきだとか、32歳で結婚して、35歳で子どもを持てば完璧な人生だとか。でも、それは幸せになるためのルールではありません。
Q マーヤーカティが生じる原因は?
A 広告会社じゃないかしら(笑)?彼らは常に人を不安にさせます。あなたに15,000バーツのフェイスクリームを買わせたりね。昔、広告の仕事をしたこともあるので「マスって一体誰が決めることなの?」って疑問に思います。今年は赤がトレンドだとなると、似合わない人まで赤い口紅をしますよね。広告会社が何でも決めてしまっています。
Q どうして他の人よりマーヤーカティが見えるのですか?
A 人より見えているとは思いませんが…、若い頃パンク(PUNK)だったからかな。私は私自身の考えを持っていますし、みなさんも自分の信念を持つべきだと思います。マス(多数派)に流されずに、自分の人生を生きなきゃ!
Q マーヤーカティを防ぐには?
A 好きなことを見つけることです。釣りでもサイクリングでも何でもいい。重要なのは、人より収入が多いかどうかではなく、あなた自身が毎日幸せかどうかということです。
Q あなたもマーヤーカティに囚われていますか?
A もちろんです。もし女のタグを付けられていなかったら、男として生きていたかもしれないと思うことはあります。もう今となっては、どれがマーヤーカティで、どれが本来の自分か分かりませんが。
Q マーヤーカティが見えない方が幸せでは?
A もちろんです。気がつかないうちはハッピーでいられますから。
Q では、なぜマーヤーカティについて書いたのでしょうか?読者がマーヤーカティから逃れられるようにですか?
A まさか!作家はそんなことできませんよ。読者に「そこから出ておいで」なんて言う権利はないのです。作家も命は一つしかないので、良い人生はどうあるべきかなんて分かりません。ただ、読者が知っている以上の選択肢を提示することができるだけです。その選択が良いか悪いかは、あなた自身が判断するしかありません。
Q あなたの作品に影響を与えた作家は?
A ガルシア・マルケスとアルベール・カミュですね。マーヤーカティのアイデアは彼らからヒントを得ています。
Q そのユニークな考えはどこで養われたものですか?両親の影響?
A いえ。小さい頃から多くの曲を聞いて、たくさんの本を読んできた影響だと思います。ヘミングウェイやスタインベックやカフカをよく読みました。
Q 2作目の新著はどんな内容ですか?
A 家族の物語であり、希望の物語です。タイを舞台に、中国人の家族や日本兵が登場する戦後復興の話です。
Q 次の作品の構想は?
A もう一度、短編小説を書きたいと思っています。次作では想像力を働かせて、未来のファンタジーを書いてみたいです。

1962年バンコク生まれ。3人の若者の三角関係を描いた「迷路の盲目のミミズ」が2015年のシーライト賞を受賞。